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卒業証書に添えて~校長の独り言~

昨年末から、卒業証書に記す3年生の名前の練習を始めた。
まずは正則に従おうと、パソコンを使って手本を印刷し、トレース台に乗せて写し書きをする。だが、目の前には手本が鮮明に見えているのに、そのとおりに筆は動かない。筆者の意図しないところに突如はみ出す。自分の癖が露わになる。一文字書いては天井を仰いでため息をつくことを繰り返した。それでも何枚か書くうちに少しずつ手本に近づいてくる。もうこれでいいじゃないかと飽きがくると同時に、まだまだ良くなるかもと欲が出てくる。

誰かに見てもらって「上手いね」「上手だね」と言ってもらえればもっと意欲が湧くのではないか。毎朝校長室前に掲示し、3年生からコメントを書いてもらえば励みになると考えた。素直で優しい子どもたちは、毎日のように多くの「いいね!!」マークを返してくれた。中には、「旁(つくり)の部分をもうちょっと小さめに。」や、「三画目の始筆をもうちょっと上から。」などといった忖度しない反応もあるが、フィルターバブルやエコーチェンバーに陥っていない証拠だと考えることにしてリクエストに応えている。
先日、練習枚数が100枚に達したので、一枚目の清書に臨んだ。家族の喜びの日となった誕生日を記す。両の手のひらに乗る、その小さな命が健やかなれと、どんなに願ったことか。名前に込められた願いを推し量る。季節は?天気は?・・・その時の情景を勝手に想像している。
あと数十枚練習が進んだら、二枚目の清書に臨むことにしている。質より量に頼るしかない。卒業式までの登校日はあと20日。さらに練習を進めて、三枚目の清書を終えたら、卒業生に本書一枚を選んでもらい、心を込めて手渡したい。【校長】